フェンスの素材と工法について
2025/11/01
目次
はじめに
フェンスは付けるものではなく、支えによって立っている構造物です。
家やカーポートと同じように、支柱があり、基礎があり、その上に本体があります。
風を受け、雨を受け、年月を経ても倒れないのは、見えない部分に理由があります。
まず立っている理由を知って欲しいと思います。
支える基礎を知る
フェンスの安心・安全は、目に見える部分よりも、地中に隠れている部分にあります。
支柱の根入れ深さ、基礎の形状、固定の仕方によって、風への強さや安定性が決まります。
見えない構造が、見える美しさを支えている。それがフェンスの本質です。
フェンス素材のちがい
住宅外構で使われる主なフェンス素材は、次の3種類です。
| 素材 | 主な特徴 | 耐久・注意点 |
|---|---|---|
| アルミ |
軽量で錆びに強く、デザインの自由度が高い。 鋳物調のアルミ製もある。 |
ほぼノーメンテナンスで、耐用年数は30年以上。玄関・サッシ窓と同等性能。 |
| スチール | 鉄が主材だが、電気亜鉛メッキ+塗装で防錆処理されている。 価格が抑えやすく、メッシュデザインが中心。 |
アルミに比べて錆びやすい。 |
| 人工木・樹脂木 | 木の質感を再現し、目隠し性能が高い。 横格子または縦格子デザインが主流。 |
支柱はアルミ製を使う。 アルミ・スチールより耐久性はやや劣る。 |
アルミフェンスの表面は、粉体塗装または熱転写ラッピング。
スチールフェンスは、電気亜鉛メッキ+樹脂焼付塗装で防錆。
樹脂木フェンスは、素材そのものに色を練り込み、塗装ではなく押出成形。
価格差は距離や現場条件によりますが、アルミと樹脂木の差は、一般住宅外構では極端に大きくはありません。
フェンス製造メーカーの施工基準
フェンスは本体を支えるために「支柱」を建てます。
この支柱が倒れないようにするため、各メーカーは耐風圧基準を定めています。
施工時は、その基準風速を守ることが安全の第一歩です。
| 仕様区分 | 支柱間隔 | 想定風速 |
|---|---|---|
| 標準仕様 | 2m以下 | 34m/s |
| 強風地域仕様 | 1m以下 | 42m/s |
支柱基礎について
コンクリートブロック基礎
積み上げたコンクリートブロックの内部に支柱を建てて支える方法です。
| ブロック厚 | 対応高さ | 特徴 |
|---|---|---|
| 120mm | 地盤面から 約1.2mまで | 標準的な境界フェンスに多い |
| 150mm | 地盤面から 約1.6mまで | 目隠し用途に多い |
高さを求めるほど、支柱径は太くなります。
独立基礎
地中にコンクリート基礎を個別に設け、そこへ支柱を埋設して固定する方法です。
地上高さ3m程度まで対応可能です。
フェンス本体を上下に積み重ねる「多段施工」にも対応します。
目隠しで高さを求める場合、一般的な基礎施工です。
支柱の本数とピッチ間隔
求める高さや地域の風速に応じて、支柱本数を増やす必要があります。
支柱間隔を短くすることで、耐風圧強度を高めます。
フェンス本体
一般住宅外構では、次のようなタイプに分類されます。
| 分類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 縦格子(アルミ) | シンプルで風を通しやすい。 隙間が広く、軽快な印象。 |
| 横格子(アルミ) | 水平ラインが強調され、外観デザインと調和しやすい。 |
| ルーバータイプ | 完全目隠し仕様。風は通すが視線は遮る。 格子間ピッチ15mm前後で「目隠し」と認識される。 |
| スチールメッシュ | 通風性が高く、境界明示や防犯用途に多い。 |
| 人工木・樹脂木(縦・横格子) | 木調で温かみがある。プライバシー重視の住宅に多い。 |
耐久性の保護膜について
フェンスも車と同じく、塗膜(保護膜)によって素材を守っています。
| 対象素材 | 塗膜名称・仕上げ方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| アルミ | 粉体塗装/熱転写ラッピング | 静電気で粉体樹脂を焼付。色持ちが良く、耐候性に優れる。 ラッピングは木調転写フィルムによる意匠仕上げ。 |
| スチール | 電気亜鉛メッキ+ポリエステル樹脂焼付塗装 | 防錆処理後に焼付塗装。強度と光沢を両立。 |
| 樹脂木 | 無塗装(押出成形) | 樹脂と木粉を混合し、色を内部まで練り込む製法。表面にUVカット層を施す製品もある。 |
高さと構造の関係
高さを上げるほど、基礎の数と支柱の数は増えます。
これは風を受ける面積が広がるためです。
「目隠しを強くする」=「構造を強くする」という理解が大切です。
まとめ
判断の基準は、次の三つだけで十分です。
- 求める高さ。防犯・プライバシーの目的
- 目隠しの要否。視線を遮る必要があるか
- デザイン。単色、木調、メタリック
この三つの順に整理すれば、素材も工法も自然に決まります。
フェンスは飾りではなく、支えがあって初めて形になるものです。
構造を理解することで、安心して、正しく、美しく選べるようになります。
※掲載画像の一部はメーカー公式サイト LIXIL様より引用・転載しております。
出典:LIXIL株式会社「フェンス・門扉カタログ」
監修:荻野勝幸(一級左官技能士・一級エクステリアプランナー)


















