土間コンクリート仕上げ、表面の変色、色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミの原因について教えて下さい
現在の所、明確な原因究明は判明されてません。左官職人としての経験を基にお伝えし、今後の予防策として参考にして頂ければれば幸いです。
はじめに
「土間コンクリート仕上げ」は、コンクリート素材が持つ特徴を最大限に生かした工法です。それは限られた凝結時間(固まり続ける時間)の中で、職人が鏝・コテを使って表面を平担・平滑・美観を整え、最終的に密度の高い面を形成する素地仕上げとしているのです。よって、技能の差による完成度の違い、出来栄えも変わり、仕上がり面がユーザーの視覚的判断による諸問題も発生します。
例えば、料理作りにも似ています。料理人さんによって同じ食材、同じ調理器具を使っても、微妙な味付けや火加減も違えば、味に違いや差が出る事と同じ事だと言えます。また、土木建設業界特有の特徴・諸事情でもあるのですが、工事現場は工場生産と違い、工事現場ごとの場所場所による違いや、天候に左右されやすい環境、業界ならではの特徴や諸事情もあります。
考えられる3つの要因
1.人的要因:適切なコテ・鏝を選び、適切な状態で行う
作業は主に「コテ・鏝」と言う道具を使用します、最近では調理器具同様に技術の進歩もあり、以前に比べると道具事情も様変わりしました。近年、軽く薄く柔らかい特長を持つ、ステンレス製のコテが市場に流通し始め使われています。「コテ」には多数種類があります、主に材質は鋼で製造されたものが多く、鋼の材質・硬さによっても微妙に違いがあり、使い分けて作業します。中でも、ステンレス製コテは、使う用途により重宝され、物凄く真価(使い勝手)を発揮するのですが、近年は土間・床面の仕上作業の場面で頻繁に使われ、誤った使い方をされいるのではと考えています。
コテの使い方は包丁を切る動作と同じよう、人が力を加え、強弱を加減、角度を調整しながら使います、これをコテ圧と言います。固まり続けるコンクリート自体の水分乾燥蒸発、状態を見計らい、コンクリートの表面にコテを接触させます、そしてコテ圧を加減をしながら仕上げて行きます。そうする事でコンクリートを平滑平坦にし、表面の見栄え・美観を整えて行く、一連の流れが作業手順でもあります。
コテは材質が重くて、硬ければ硬いほど、コンクリートの中まで伝わる事により、水分を押し出し、密度を高めます。逆に、軽くて薄い柔らかいステンレス製コテは、中までコテ圧が伝わりにくく、表面だけを撫でているような状態になります。効果や機能は表面だけを撫でる、触れている、接触させるだけの目的で製造された経緯もあるのです。すなわち、圧力を加減すると言う物理的な行為は、本来の目的とする土間コンクリートの表面仕上げ以外である、コンクリート中の状態にも影響を及ぼしているのです。
コテは、コンクリートの状態に対して使い分けるのですが、なぜか間違った、適切ではない状態で適切でないコテを使われるケースがあるのです。大事なポイントは適切なコテを選び、適切な状態で使う事が重要であります、それらは、道具の選び方や使い方と同じく、伝えていく為の技能伝承の一つでもあるのですが、人による要因もあり、問題点でもあるのです。
※コテによる圧力:鏝をなでる、平滑にするとも言いますが、この場ではコテ圧と表現します。
※状態:セメントの凝結時間、水引き乾燥状態。
※参考文献:JCMマンスリーレポートコンクリートの話⑦
2.外的要因:お天気、気象、降雨、温度・湿度・霜・霧 気象学
気象にもかなり影響を受けます。気温が高ければのどが渇くように、コンクリート中の水分は早く蒸発します。また、晴天時は直射日光が当たるところと、当たらないところの日陰では、同一条件下であってもコンクリートの状態が変わります。
作業時のお天気と言えば、雨天以外が当然必須条件なわけですが、それを最終的に予測判断を察知し、遂行するのが我々工事業者です。しかし、お天気ですので字のごとく天の気まぐれ、場合によっては急な変化もあります。天候気温や工事現場の条件によっては、生コンの微妙な配合も変えたりするのです。
特にコンクリート表面が仕上がる直前や直後に、降雨や霜による水分を浴びると、表面の状態に影響を及ぼします。つまり化学変化に伴った、まさに表面仕上げが終えようとするその時に、意図しない水分による影響により、なお一層表面に化学変化が発生します。時にこの状態でコテ圧を掛けたりしますと、さらに一段と表面は変化します。表層の物質が散開、散らばっていくような状態にもなり、変色の要因だと考えられています。よって、コンクリートの凝結硬化時間に影響する、冬期や雨天降雨時は、比較的多く発生する傾向があります。
3.内的要因:材料工学・コンクリート工学での論文研究、考察
生コンクリートは工場製造された時から固まり始めています。水和熱(水とセメントの反応)によってどんどん固まり(凝結)始めて行くのです。つまり、物質そのもの自体、コンクリートは化学変化によって固まるのです。次第に固まって行くコンクリート表面では表層が形成されます。形成されるまでに、コンクリート表面では幾度なく化学変化が繰り返されます。言い換えますと、やがて緻密な層が形成されるのです。
コンクリート中には当然、水分が含まれるのですが、固まり続けるている間に、水分が表面に上がる性質を持っています。この現象は専門用語でブリージング現象と言われ、水分はブリージング水・余剰水と言い、この水分が関係しているとも言われています。コンクリート材に含まれる、セメントや砂・砂利にも含まれる「レイタンス」と言われる不純物も指摘されています。レイタンスはセメントや骨材に含まれる微量の不純物で、どうしても製造上、仕方のない不純物質なのです。混和剤と言う特殊な液体も影響が考えられていますが、主に構造物の分野で使用されるので、外構分野では影響は少ないと判断できます。生コンクリートは製造工場によっての微妙な違いや差もあり、製造工程等の内容にもなりますので、実に困難で難しい分析判断ではあります。
まとめ
大手セメント製造販売会社、住友大阪セメント(株)様のレポートをご紹介します。現時点ではとても理にかなった内容です。※『コンクリート表面での水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの生成状況の違いによることも多い。色むらを生じた部分は、グレーの色調が濃く黒っぽく見える部分と、淡く白っぽくみえる部分に分けられる。一般に、色が濃い部分には、板状の水酸化カルシウム(材齢の経過と共に炭酸化して炭酸カルシウムとなる)が重なり合った密実な層が認められる。』
この「密実な層」こそが、土間コンクリート仕上げの変色、色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミだと言う事です。すなわち、水分による要因が大きいと推測されます。それはコンクリート表面に対して、触れてしまう水分てあったり、コンクリート中に含まれる水分であることが読み取れます。
※参考文献:住友大阪セメント(株)様のレポート「コンクリート表面の変色、色むら」より引用させて頂きました。
防ぐためには
1.良好な工事環境下で行い、工事後の養生をする
2.適切なコテを選び・適切な状態で作業する
3.良質な材料、コンクリート配合とする
つまり、コテ圧・材料の配合、全てが均一でないと、揃わないと言う事です。
最後にコンクリート仕上げについて、とても奥深い言葉がありましたので、ご紹介したいと思います。
「コンクリート仕上げは、その素材をそのまま生かした表面の素肌の美しさが最も綺麗な状態である」 近未来コンクリート研究会、代表 十河茂幸 コンクリート工学博士より。