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伸縮目地について、土間コンクリートの考え方

「コンクリートは割れるんですよね?」 「伸縮目地って、デザインの線ですか?」

 

お客様からよくいただく質問です。

 

実は、伸縮目地の目的は“見た目”ではなく構造を守るための逃げ道です。

 

なぜ伸縮目地が必要なのか

コンクリートは乾燥・気温・荷重などで常に伸び縮みしています。

 

このわずかな動きを吸収するのが、伸縮目地の役割です。

 

目に見えない「応力(おうりょく)」が常に内部で働いており、 それを外へ逃がしてやることで、全体のひび割れをコントロールしています。

 

外壁サイディングにも次目(つぎめ)がありますよね、それと同じです。

 

誤解が多い「デザイン目地」

スリットやラインを入れると見た目がオシャレに見える。

 

そう思う方が多いのですが、実際には構造の意味が全く違います。 伸縮目地はデザインではなく安全装置です。

 

 

意図的にクラック、ひび割れを作っていることと同じです。

 

橋脚や高架道路にもある“縁切り”の仕組み

橋脚や高架道路で、渋滞中に車が揺れてることってありませんか、 実はそれ構造を分割して、応力を逃がしているからです。

 

コンクリートも同じ、縁を切ってやることで、全体が壊れないようにしているんです。

 

応力を和らげる緩衝材の役割も担ってます。

 

伸縮目地があることで得られるメリット

  • 温度変化による膨張・収縮を吸収し、ひび割れを一箇所に誘導できる
  • 打設時の定木(じょうぎ)刷り精度が安定し、コンクリート表面の平滑差が整う
  • 完成後も経年変化を「管理できる」構造になる

 

 

施工経験からの実感

伸縮目地を入れると、施工中のレベル出しや鏝(こて)仕上げの安定感がまるで違います。

 

打設範囲が区切られることで、施工が容易になり、平滑度が高まり、美しい仕上がりになります。

 

逆に、目地を入れずに一面で打設すると、 乾燥差や勾配のわずかなズレで、後に微細なひび割れが発生しやすくなります。

 

伸縮目地=「割れを防ぐ」ではなく「割れる場所を決める」

伸縮目地は、コンクリートが“どこで割れるか”を職人がコントロールするための仕組みです。

 

これにより、全体の形や美観を長期間保つことができます。

 

 

つまり、「ひび割れを防ぐ」のではなく、「ひび割れを管理する」ための構造的判断です。

 

まとめ:コンクリートは生きている素材

コンクリートは固まって終わりではなく、呼吸しながら強くなります。

 

だからこそ、伸縮目地という“逃げ道”を最初から設計してあげることが大切です。

 

伸縮目地は見た目ではなく構造の哲学。 職人の経験と判断が、美しさと耐久性を両立させています。

 

よくある質問

Q:伸縮目地を入れないとどうなりますか?
A:温度差や乾燥でひび割れが発生しやすくなります。 割れ方をコントロールできないため、美観も保ちにくくなります。

 

Q:デザインスリットとの違いは?
A:伸縮目地は構造上の逃げ。スリットは見た目の区切りです。目的がまったく異なります。

 

Q:ひび割れは完全に防げますか?
A:いいえ、コンクリートは必ず動きます。 大切なのは「どこで、どう動くか」をあらかじめ決めておくことです。

 

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監修:荻野勝幸(一級左官技能士・一級エクステリアプランナー)

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