ワイヤーメッシュについて、役割と意味
2025/10/27
土間コンクリートの中には、目に見えない設計があります。
それは「鉄を入れたから安心」ではなく、「構造として機能するように配置されている」ことが大切です。
目次
ワイヤーメッシュとは
ワイヤーメッシュ(正式名称:溶接金網/JIS G 3551)は、鉄筋を格子状に溶接した補強材です。
目的は単なる割れ防止ではなく、コンクリート全体の荷重や温度変化、微細な動きを「均等に分散する」ためにあります。
コンクリートは押す力には強く、引っ張る力には弱い。
この性質を補うために、下地の中で引っ張り力を受け持つのがワイヤーメッシュの役割です。
構造の中でどう機能しているか
駐車場やアプローチでは、上からの荷重、地面からの反力、そして温度変化による膨張、収縮が起こります。
ワイヤーメッシュは、その力を1点に集中させず、面全体で受け止めることで、コンクリートを「分散構造」として機能させます。
つまり、ただ入っているのではなく、コンクリート全体が「構造化」されている状態です。
その設計を成り立たせるのが、鉄筋の位置、間隔、固定、かぶり厚さ。
どれも仕上げよりも先に決まる、構造の設計行為です。
重ねしろの意味を理解する
ワイヤーメッシュは1枚の板ではなく、複数を敷き並べてつないでいきます。
このとき重要なのが「重ねしろ(定着長)」です。
鉄筋同士がしっかりと力を伝え合うためには、一定の重なりが必要です。
重ねが足りないと、コンクリート内部で応力が途切れ、割れがつながりやすくなります。
標準的な重ね長さ(重ね継手)は、1節半が目安。たとえばφ5mmのメッシュなら、150mm以上重ねる必要があります。
なお、メッシュの種類や使用場所によっては、設計図書やメーカー規定に従うことが基本です。
現場では見えない部分ですが、ここを正確に守ることで、構造の“連続性”が生まれます。
ワイヤーメッシュは「敷くもの」ではなく「つなぐもの」。
力が流れる方向を意識して重ねることで、土間全体が一体構造になります。
置く、敷くではなく、浮かせる
「被り厚さ」とは、ワイヤーメッシュをコンクリートで覆い保護する厚みのことです。
薄すぎても、厚すぎても効果が半減します。
一般的には6センチ以上を確保するのが望ましいとされています。
メッシュを浮かせて適正位置に保つことで、引っ張り力と圧縮力のバランスが整い、コンクリートが最大限の強度を発揮します。
浮かせる高さは「サイコロ」と呼ばれるスペーサーブロックなどで一定に保ちます。
現場での精度が美しさをつくる
ワイヤーメッシュの高さが5mm違うだけで、コンクリートの中での力の流れが変わります。
上すぎれば錆びやすく、下すぎれば効果が半減します。
適切な位置を維持するために、現場では「サイコロ」と呼ばれる小さなブロックで高さを一定に保ちます。
こうした構造精度が保たれていると、表面の鏝仕上げがより安定し、平滑性や排水精度も高まります。
つまり、見えない構造が見える仕上げを整える。それが“構造美”です。
割れを抑えるという本質
コンクリートのひび割れは「悪」ではありません。
重要なのは「どこで止まるか」「どう制御されているか」です。
ワイヤーメッシュは、コンクリートが割れたとしても、その亀裂を広げず、段差や沈下につながらないよう“構造の連続性”を保ちます。
これは伸縮目地やカッター目地と同じく、“割れを防ぐ”ではなく、“割れを設計する”という考え方です。
素材と構造の一体設計
スタンプコンクリートや刷毛引き仕上げなど、表面デザインが違っても、構造は同じ理論で支えられています。
デザインと構造は、別ではありません。
どちらかが欠ければ、長期的な美しさは保てません。
職人の仕事とは、仕上げの美しさだけでなく、その下に流れる力の設計までを含めた「構造デザイン」なのです。
それが「美しさを設計する」という、職人にしかできない仕事です。
まとめ
ワイヤーメッシュは「割れ防止のために入れるもの」ではなく、「構造そのもの」です。
見えない内部の精度が、表面の美しさと耐久性を決めます。
メイクプラスターでは、鏝の音や押さえの感触と同じように、鉄筋の配置や高さ、重ねしろまでを「構造美」として考えています。
構造が整えば、仕上げは自然に整う。
それが職人の感覚と科学が交わる瞬間です。
よくある質問
Q:ワイヤーメッシュを入れたのに割れました。
A:割れはゼロにはできません。重要なのは、その割れをどこで止め、どう安定させるかです。
Q:鉄筋とワイヤーメッシュは違いますか?
A:構造上は同じ考え方です。ワイヤーメッシュは細径鉄筋を格子状に溶接したものです。
Q:どんな種類を使っていますか?
A:「100×100×φ6」など、場所と荷重条件で変わります。敷地条件に合わせて選定します。
Q:スタンプコンクリートにも必要ですか?
A:はい。仕上げがスタンプでも、構造は同じです。見えない中身の設計こそが、美しさを支えます。
監修:荻野勝幸(一級左官技能士・一級エクステリアプランナー)





















