デッキ・縁側・縁台について
2025/11/03
はじめに
庭に“床”をつくるという行為には、建築的な理由と、人の暮らしの願いが重なっています。
デッキや縁側は、家の中と外をゆるやかにつなぐ「中間の空間」。
夏の夕涼み、子どものプール、洗濯物を干す、腰をかけて休む。
人はいつの時代も、暮らしの延長に“ひとつの床”を求めてきました。
今回は、ウッドデッキ・タイルデッキ・縁側・縁台の構造と役割を、素材の優劣ではなく、「なぜ必要とされるのか」という視点から考えてみましょう。
デッキとは
建築的に見れば、デッキとは「屋外に設けられた水平な床面」です。
リビングの延長として庭へと空間を広げる構造であり、外に出ても安心できる“もうひとつの床”。
支えるための下地や束柱、防草砂利を敷くかどうかで、仕上がりや維持性が変わります。
重要なのは、素材よりも「どのように支えられているか」という構造的な理解です。
縁側と縁台
縁側は、もともと日本家屋で雨戸や障子の外に設けられた板の間でした。
屋内と屋外をつなぐ“間の領域”として、風や光を取り入れ、人が腰かけ、会話を交わす場所。
縁台は、その文化を簡略化した「庭のベンチ」のような存在です。
そこには「家と庭の間で過ごす」という日本人の生活感覚が生きています。
暮らしとデッキの関係
デッキには、大きく三つの欲求が重なっています。
- リビングの延長として外へつながる空間
- 家族や子どもと季節を楽しむ場所
- 庭への行き来を助ける“腰かける床”
人はいつか、座る・立つ・外を見るという動作の中に「距離の心地よさ」を求めます。
デッキや縁側は、その小さな心地よさを形にした空間です。
現代のデッキ仕様
どちらが良いではなく、目的によって選び方が変わります。
ウッドデッキ&タイルデッキの構造比較
| 比較項目 | ウッドデッキ 人工木 | タイルデッキ |
|---|---|---|
| 素材 | 樹脂+木粉 人工木材 | 磁器タイル+コンクリート下地 |
| 構造 | 束柱と根太の上に床板を張る 下は防草砂利 or 土間コン |
下地コンクリートにモルタル貼り 基礎と一体化しやすい |
| 高さ調整 | 束柱で調整しやすい 段差・スロープ対応可 |
打設で自由度あり ステップ設計で美しく納まる |
| 表面温度 | 夏は熱くなりやすい 素足では高温注意 |
熱を持ちにくく快適 |
| 耐久性 | 約20年前後 | 約50年以上 構造体同等 |
| 劣化要因 | 紫外線による人工木材の反り・退色 | 目地からの白華・タイルの浮き |
| メンテナンス | ほぼ不要だが色あせあり | 汚れ・油・火に強く掃除が簡単 |
| 質感 | 木の温もり・やわらかい印象 | 重厚感・高級感・外観統一 |
| デザイン | 木目調・浮造り・板目など | 木目調・300角・600角・大判タイルなど |
| 施工期間 | 約1〜2日 | 約3〜5日 下地養生含む |
| 用途イメージ | リビング延長・休憩・子どもプール | 屋外リビング・玄関階段との一体設計 |
※タイルデッキの耐久年数は、下地構造を含めた目安です。目地や接着層の補修は10〜20年周期で行うのが理想です。
デザインの種類と印象の比較
| 比較項目 | ウッドデッキ 人工木 | タイルデッキ |
|---|---|---|
| デザインパターン | 浮造り・木目調・シンプル板目 | 木目調タイル・300角・600角・大判タイルなど |
| 色調の印象 | ナチュラルブラウン系が中心 柔らかく明るい雰囲気 |
グレージュ・ホワイト・石目など 建物との統一感が出しやすい |
| 質感 | 温かみ・軽快感・自然な素材感 | 重厚感・高級感・シャープな印象 |
| 空間イメージ | 家族のくつろぎ・生活感・やさしさ | ホテルライク・外構デザインの一部として統一 |
| おすすめの用途 | リビング続き・子ども・ペットスペース | 屋外リビング・玄関階段・テラス空間 |
まとめ
デッキも縁側も、支えがあって初めて形になる“床”です。
素材や価格の前に、その床がどのように支えられ、どんな時間を生み出すのかを考えること。
それが、外構を「暮らしの一部」として育てていく第一歩です。
※掲載画像の一部は、メーカー公式サイト「LIXIL」様および「三協アルミ」様より引用・転載しております。
監修:荻野勝幸(一級左官技能士・一級エクステリアプランナー)

















