土間コンクリート仕上げ、表面の変色、色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミについて教えて下さい
土間のコンクリート仕上げ、表面の変色・色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミの原因について教えて下さい。
コンクリートの変色や色ムラ、染みや黒ずみの原因が知りたい!どうしたら長期間美しいコンクリート面をキープできるのか知りたい!シミや変色で安全性に問題はないのか不安……。
こんな疑問にお答えします。
いわゆる「コンクリート打ちっ放し」をデザインに取り入れた建築物や舗装なら、いつまでもコンクリートの色合いを美しく保ちたい……とお考えになる方も多いのではないでしょうか。
私たちメイク・プラスターにも、ご自宅の駐車場やエントランスに使った土間のコンクリートが変色してしまい、安全性や耐久性にご不安を感じておられるお客様からのご相談をお受けすることがございます。
コンクリートを扱う専門工事会社、現場施工の左官職人としての経験を基に、「これから土間コンクリート仕上げを導入ご検討のお客様」向けに、コンクリート仕上げの「変色・色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミの原因」をお伝えします。
予防策として参考にして頂ければ幸いです!
3つの大きな要因
コンクリート変色の原因に大きく影響する3つの要素があります。それが、以下の3つです。
- 人的要因「コンクリート職人の技術力」
- 外的要因「打設工事時の天候」
- 内的要因「コンクリート材料そのものの成分」
一つずつ、ご紹介します!
1.人的要因 「コンクリート職人の技術力」
「土間コンクリート仕上げ」は、コンクリート素材が持つ特徴を最大限に生かした工法です。
限られた凝結時間(固まり続ける時間)の間に、職人が鏝・コテを使って表面を平担・平滑に整えます。
実は、この時の作業は単に表面だけを滑らかに美しく整えるだけが目的ではありません。
「密度の高いコンクリート」を形成するための仕上げでもあるのです。
この作業には、主に「鏝(コテ)」という道具を使用します。
「コテ」にはもともと、大きさや厚みなどいくつかの種類があります。昔は鋼で製造されたものがほとんどで、鋼の材質・硬さによって微妙に違いがあるコテを、職人は使い分けて作業してきました。
近年、技術進歩もあり、使われる道具も変化しつつあります。特に、軽く、薄く、柔らかい特長を持つ、ステンレス製のコテが登場したことが大きな変化です。
ステンレス製コテも、使う用途によってはとても使い勝手が良く、性能を発揮するのですが、誤った使い方をされているのではないかと、私は長年の経験則からそのように考えています。
包丁で切る動作と同じように、人が力を加え、強弱・角度を加減調整しながら使うのがコテです。「コテをなでる」と言いますが、単に撫でているだけではありません。適切な圧力をかける必要があります。これをコテ圧といいます。
固まり続けるコンクリートの水分が乾燥蒸発する状態(凝固時間)を見計らい、コンクリートの表面にコテを接触させます。その時コテ圧を加減しながら仕上げていきます。コテは材質が重く硬いほど、コンクリートの中まで力を伝え、水分を押し出し、密度を高めます。
軽くて薄い柔らかいステンレス製コテでは、コンクリート内部までコテ圧が伝わりにくく、表面だけを軽く撫でているような状態になります。表面が滑らかになるように撫でる、という目的には非常に簡単に扱えて便利です。
コテは、コンクリートの状態に対して使い分けるのですが、適切ではない状態で適切でないコテを使われるケースがあります。この「コテの選択と力の加減」が職人の技能伝承の一つなのです。
コンクリート内部の水分調節がうまくいかなかったことが、表面の変色・染みの原因になる場合があります。
※参考文献:一般社団法人 全国土木施工管理技士会連合会発行「JCMマンスリーレポート コンクリートの話⑦」
2. 外的要因 「打設工事時の天候」
コンクリートの仕上がりは、打設工事時の気象にも影響を受けます。
気温が高ければのどが渇くように、コンクリート中の水分は早く蒸発します。
また、晴天時は直射日光が当たるところと・当たらないところでは、状態が変わります。天候気温や工事現場の条件によって、生コンの微妙な配合を変えるなど対処する必要があります。
なかでも「雨天」は当然避けなければならない必須条件ですが、それを最終的に予測判断するのが我々工事業者です。
特にコンクリート表面が仕上がる前後に、降雨や霜による水分を浴びると、表面の状態に影響を及ぼします。
化学変化の最終段階で意図しない水分が影響すると、表面だけ変化が進行します。この状態でコテ圧を掛ければ、さらに一段と表面は変化します。
表層の物質が散開(散らばっていくような状態)になることが、変色の要因だと考えられています。
そのため、コンクリート打設工事が冬期や雨天だった際は、比較的変色が多く発生する傾向があります。
3. 内的要因 「コンクリート材料そのものの成分」
生コンクリートは、工場製造された瞬間から固まり始めています。水和熱(水とセメントの化学反応)によってどんどん固まり(凝結)始めて行くのです。
次第に固まって行くコンクリート表面では「表層」が形成されます。コンクリート表面では幾度なく化学変化が繰り返されます。化学変化を繰り返すことで、やがて緻密な層が形成されるのです。
コンクリート中には水分が含まれるのですが、固まり続けている間に、水分が表面に上がる性質を持っています。この現象を専門用語でブリージング現象と言います。この水分は、ブリージング水・余剰水と呼ばれています。この水分に含まれている成分や出方が変色の原因の一つになります。
また、コンクリート材(セメントや砂・砂利)に含まれる「レイタンス」と言われる不純物についても、原因のひとつであると指摘されています。レイタンスは製造上発生する微量の不純物質です。
また、「混和剤」という特殊な液体の影響も考えられていますが、主に構造物(建物)の分野で使用されるので、駐車場などの外構分野では混和剤の影響は少ないでしょう。
この、成分による色ムラについては住友大阪セメント株式会社さまのレポートが非常に参考になります。
“引用” コンクリート表面での水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの生成状況の違いによることも多い。色むらを生じた部分は、グレーの色調が濃く黒っぽく見える部分と、淡く白っぽくみえる部分に分けられる。一般に、色が濃い部分には、板状の水酸化カルシウム(材齢の経過と共に炭酸化して炭酸カルシウムとなる)が重なり合った密実な層が認められる。
※出典:住友大阪セメント株式会社「コンクリート表面の変色、色むら
この「密実な層」こそが、土間コンクリート仕上げの変色、色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミだということです。
原因特定は極めて難しい
コンクリートを使った工事は、料理作りにも似ています。
同じ食材、同じ調理器具を使っても、料理人によって微妙な味付けや火加減が違えば味に違いや差が出るように、コンクリートの仕上がりにも違いが出ます。
また、土木建設業界特有の特徴・諸事情でもあるのですが、工事現場は「工場」と違い、現場ごとの条件の違いや、天候に左右されやすい環境であるということも言えるでしょう。
いずれにしても、コンクリートの変色や染みの原因は一つとは限らず、施工後数年経ってしまえばその原因を確定することは現実的ではありません。
コンクリートの変色・色ムラ・染みを防ぐには?
土間コンクリートのコテ押さえの目的、仕上げについて、とても奥深い文献がありましたので、ご紹介したいと思います。
「コンクリートの表面は素肌の美しさがもっとも綺麗です。コテ押さえは、耐久性の高い打放し面を造ることが目的です。」
コンクリート工学博士・近未来コンクリート研究会代表 十河茂幸氏
※引用文献:一般社団法人 全国土木施工管理技士会連合会発行「JCMマンスリーレポート コンクリートの話⑦」
言い換えますと、土間コンクリート仕上げの目的、使命は「その素材をそのまま生かした、表面素肌の美しさが最も綺麗な状態である」とも言えます。
だからこそ「土間コンクリート」の美しさを保つために、変色・色ムラ・染みを防ぐためには以下の3点を守らなければなりません。
1.良好な工事環境で施工を行い、工事後はきちんと養生をする
2.適切なコテを選び、適切な状態で作業する
3.良質な材料、コンクリート配合を手配する
つまり、人的要因・外的要因・内的要因全てが整う必要があります。
実は、コンクリートには、たくさんの過程と人の手を経て「固まって」います。
例えば、自動車に様々な部品がいくつも使われ、工場で組み上げられ、船やトラックで輸送されたあと販売店に展示され、購入された後も、車検やメンテナンス整備が必要です。
コンクリートもまた、一大産業としての流通経路が存在します。
材料(部品)としてのコンクリートは、様々な素材(セメント・砂・砂利・水・その他)を集め、混ぜ合わせて製造したものです。そして、そのコンクリート使い、工事現場で扱うのが我々の工事業者です。
市場におけるコンクリートの流通経路は、「作る人(供給)」と「使う人(需要)」、大きく2つに分類されます。
1.作る人・メーカー(供給):セメント製造会社、生コン製造会社、砂利製造会社、商社販売店、各種研究工学機関等
2.使う人・ユーザー(需要):総合建設業者、工事業者
コンクリートの変色原因について、作る側であるメーカーは、材料工学・化学、学問・学術的観点から、研究結果や実証実験等に取り組まれており、物質そのものの化学変化による起因と発表されています。
反対に使う側である施工業者では、知識や技能の差とも考えられています。
残念ながら、この2つの立場が協力して原因究明に取り組めていないため、変色を完全に防止するための研究が進展しない要因の一つだと考えています。
すでにできてしまったコンクリートの変色・色ムラ・染みは直せる?
大変残念ではありますが、現時点の技術では、土間コンクリート仕上げ表面の変色・色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミを治す方法は存在しません。
つまり補修作業や除去作業はありません。
ごく稀に、経年劣化で自然と消えた・馴染んだという事例はありますが、何が影響して変色が消えたかという検証がされていないため、私どもとしては「いずれ消えて行きます」と断言することはできません。
しかし、1点だけご安心いただきたいことがあります。
コンクリート表面の変色・色ムラ・黒ずみ・紋々・斑点・まだら・シミは、その表面に浮き出ているものです。見栄え・美観を損なわせているものの、コンクリートそのものの耐久性に及ぼす影響はありません。
コンクリートの沈下・陥没・隆起、剥がれや腐食等の原因となるものでもありません。つまり、変色したからと言ってコンクリートの耐久性が低下しているというご心配は不要です。
読んでいただいた皆さまの不安や不満、疑問を一つでも解消でき、より良い工事を発注するための参考にして頂ければ幸いです。
愛知県・三重県で美しい土間コンクリート施工を請け負う職人をお探しのお客様は、是非お気軽にお問い合わせください!
執筆者:株式会社 メイク・プラスター 荻野勝幸 1級左官技能士、1級エクステリアプランナー