スリット目地、隙間について、土間コンクリートの考え方
2025/10/24
土間コンクリートにスリット目地や隙間を入れると、おしゃれに見える。
コンクリートとコンクリートの間に隙間を作ると、デザイン的に美しく見える。
そう思い込む前に、考えてほしいことがあります。
なぜなら、土間コンクリート仕上げは「構造」で考えると、後悔しないと思います。
よくある誤解
スリットはデザインのために入れるもの。
幾何学模様でかっこいい。
スリットが多いほど高級に見える。
とりあえず入れておけば割れにくい。
私どもの見解
スリット目地は、デザイン目的で入れるものではないと考えています。
構造上の意味を理解しないまま入れると、失敗後悔の原因になることがあります。
スリット目地は、基本的には不要です。理由は三つあります。
- コンクリートの一体構造としての性能が損なわれる。
- 目地やスリット、隙間があると、雑草・泥・汚れの発生源になる。
- 排水や勾配の設計を乱し、水が溜まりやすくなる。
住んでみて後悔するケース
- 駐車場全面に細かいスリットを入れた結果、雑草と泥だまりに悩む。
- スリット中の砂利が雨で減ったり、タイヤで引っ張られて減っていく。
- 場所によっては、風でゴミを受けやすく、溜まりやすくなる。
- 段差が発生し、歩行しづらい。ベビーカーではガタつく。
- 地被植物を植える場合は、維持管理の覚悟が必要。
正しい設計の考え方
そもそも、コンクリートは割れるものです。
割れないように施工しているのではなく、「どこで割れるか」を設計しています。
基本は、一体構造で滑らかに仕上げることです。
ひび割れの抑制方法は二つしかありません。
一つは、亀裂緩衝棒材による伸縮目地。
もう一つは、意図的に入れるカッター目地施工です。
視覚上の区切りは、色や仕上げの切り替えで対応し、排水は最短距離で水を逃がす。
スリットに頼らない設計を基本としています。
例外的に必要となる場合
敷地条件によっては、スリットを設ける方が合理的な場合もあります。
たとえば、排水計画が取りづらい敷地では、スリット目地を間に設け、自然排水溝として活用する設計も可能です。
ただし、それは“排水機能のための構造”であり、デザイン目的ではありません。
弊社での工夫
- セメントレンガや天然石材など、舗装材で見切る。
- フラットな面を設け、床面舗装を一体仕上げにする。
- 縁部はエッジを丁寧に取り、影のラインで締める。
まとめ
スリット目地や隙間は飾りではありません。
構造の美しさとメンテナンス性を優先すると、多くの場合は不要ではないかと考えています。
10年、20年後に「埋めたい」「不要だった」というご相談を多くいただくからこそ、そう考えています。
外構デザインは、見た目ではなく「構造から考える」ことが大切だと考えています。
それが長く美しく保つ一番の近道だと思います。
よくある質問
Q:スリットを一本も入れないと割れませんか?
A:割れはゼロにはできません。伸縮目地とカッター目地で割れ位置を管理します。
Q:デザイン性は落ちませんか?
A:見せ場を限定し、素材を切り替える方が上質です。全体は一体、見せ場で勝負します。
Q:掃除は楽になりますか?
A:目地やスリットが減るほど、汚れは溜まりにくくなります。
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監修:荻野勝幸(一級左官技能士・一級エクステリアプランナー)











